冷酷無慈悲な悪魔公女ですので暴君殿下に溺愛されても動じません

7 エピローグ

 ***

「これより、王太子イヴァン・ザカルトと、シルビア・シャーノンの結婚式を執り行います」

 神父が二人の間に立ち、誓いの言葉をすらすらと口にした。

 聴衆は皆、過去にうつけ者と呼ばれ蔑まれてきたイヴァン・ザカルトと、才女であるが感情が欠如している悪魔公女シルビアシャーノンを見て、冷笑を浮かべ、囁きあった。

「お似合いの二人だな」
「ああ、どちらとも大きなものが欠如している」

 神父が神への誓いを終え、二人に向かって言った。

「その命が尽きる最後の日まで、互いを尊重し、互いを思いやり、互いを愛すことを誓いますか」

 シルビアが「はい」と返事をすると、顔をしかめたイヴァンの口が動き、シルビアがきょとんとした顔で見つめた。
 そして、しばらくすると、

「ふっ……ふふっ」

 と、シルビアが声を漏らし、小さく笑った。
 すると、それを見ていた聴衆がざわついた。

「悪魔公女が笑ったぞ……!」
「あのシルビア様が?一体何があったんだ?」
「いやいや、それにしても……」

 なんと美しい——。
 
 シルビアの笑顔を見た人々は皆、ほうっと満開の花が咲いたような眩しい笑顔に釘付けになった。

 ざわめきに気づいたイヴァンが、怒ったように眉を吊り上げる。

「あまりそのような笑顔を皆に見せるな……!」

「なぜです?」

「特別だからだ!」

 イヴァンを胸を張ってそう言った。目の前の愛しい男を抱きしめたい気持ちをぐっと堪え、シルビアはじっと見つめ返した。

「それでは誓いのキスを……」

 イヴァンがシルビアのベールをそっと持ち上げる。近づく真剣な表情に、なぜか愛おしさが込み上げる。


 

——最後の日などない。俺は来世もお前と結婚するつもりだ。


 

 うつけ者の堂々たる宣言を思い出したシルビアは、またくすぐったいような気持ちで笑みをこぼした。



 fin.
 

 
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