冷酷無慈悲な悪魔公女ですので暴君殿下に溺愛されても動じません
 
 それも無理はない。自分の利益になることしか考えず、 他人への興味など一切ないはずのイヴァンが。家庭教師に任命しておきながら、あれだけ自分をこき使ったイヴァンが。自分を気に入っているだなんて。
 
 それに、イヴァンの家庭教師をしている間は何度も口論になった。一度家庭教師という役割を担ったからには、必ずイヴァンの成績をあげたかったシルビアは、相手が第一王子であることは関係なく、厳しく指導したのだ。その甲斐あってイヴァンの成績はみるみるうちに上がったのだが、自分の学力のなさと、シルビアの要求の乖離にイヴァンはよく腹を立てていた。

「わからないと言っているだろ!」

「ですから、どこがわからないか聞いているのです。2つ目の計算式ですか?確かにこれは少し難しくて……」

「俺はどこがわからないかもわからないんだ!」

「困った人ですね。では、一から教えますので覚悟してください」

「くそっ!」

 イヴァンが卒業するまで、そんな不毛な言い合いを続けていた。
 あの乱暴なやりとりを思い返しても、イヴァンが自分を気に入っていたとは到底思えない。
 
 イヴァンの狙いが何かはわからないが、どれだけ考えてもうつけ者の本心などわかるはずがなく、将来の王妃との関係を良好にするため言ったのだろうと、シルビアは静かに結論付けた。

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