あなたの心に寄り添いたい 〜この好きという気持ち〜

努力は報われない

席が隣になった人が、まさか私の名前を覚えているとは。
キツネってバカにするために話しかけてきたんだよね、きっと。
私には、お父さんとお母さんがいなくて、養父母さんに育ててもらっている。
小学生のとき、それを知った人から本当の親がいないからこんなクソな子なんだ、と言われた。そのときと同じ目をしていた、歩夢という人は。
ため息が出そうになって、こらえる。
その後の授業は本を読み、あっという間に休み時間になった。
「はやく夏休み来ないかなぁ…」
「7月7日の日曜日に、花火大会あるんだって!行こうよ!」
花火、か…。
最後に見たのは、いつだっけ。確か、幼稚園の頃だったかな。
「えっ、ホント⁉︎行きたい〜」
「花火もいいけどさ、私ね、水泳で、結構泳げるようになったの!プールも行きたいよね」
「いいね、プール‼︎やっぱり努力って報われるんだね」
私はその言葉に、ぎりッと奥歯を噛みしめる。
努力なんて、報われない。
『お前、定着度テスト、全部満点なんてウソだ!カンニングだろ‼︎』
『違うよ。カンニングなんて、してない』
『どうせ、本当の親がいないから、せめて勝ちたくてカンニングしたんだ。この点、ウソだよ』
どうせ、の後に続くのは、いつも良くない言葉だった。
どんなに隠れて努力したって、本当の親がいないから、で終わらせられるんだ。
…誰も、認めてくれない。
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