湖に映る月

運命が動いた

穏やかな光が差す宮中。

私が暮らす部屋にも、その光は差し込んでいる。

その時、女房のあきが欠伸をした。

「失礼しました。」

「いいのよ。本当に暇よね。」

庭を見ると、猫が一匹通る。

その歩みを見ているだけが、今の時間の暇つぶしだ。


「礼子。」

ふと廊下を見ると、兄が尋ねてくれていた。

「これは兄上。今日は?」

「何か役目がないか、話を聞きに来たところだよ。」

兄上は、ゆっくりと私の前に座った。

「それで?なんぞ、役目はおありでしたか?」

「いや、人が余っていて、見回りの仕事しかないと言われた。」


私達兄弟の家は、橘家と言って昔は活気づき、父の代は右大臣をしていたが、それはもう昔の話。

家は落ちぶれ、貧しい生活をしている。

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