湖に映る月
そう言われると、肩が重くなる。

「兄上様こそ、なんぞ役目を貰えたら、もしかしたら皇太子様のお渡りもございますのに。」

私達兄妹は、顔を見合わせた。


「まあまあ、お二人共。そこまでですよ。」

あきに宥められ、私はまた庭を見た。

すると先程の猫がいなくなっている。

「あら、あの猫はどこに行ってしまったのかしら。」

私は庭先に降りると、猫を探して右左を見た。

「礼子の飼い猫だったのか?」

「いえ、野良猫だと思うのですが。」

「では、他の場所へと行ってしまったのだろう。」


私はがっかりしてため息をついた。

猫でさえ、私には懐いてくれない。

すると、後ろからニャーという声が聞こえた。

見ると、あの猫だ。

「ああ、心配しましたよ。」

拾い上げて、背中を撫でると猫はゴロゴロと喉を鳴らした。

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