キミと風に乗って
「……っ」
その人が動揺するのを感じ取った。
だけどわたしはそれに構わず、腰に回した腕にぎゅっと力を入れる。
自分よりも大きな体に包まれて、その夜わたしは久しぶりにぐっすりと深い眠りにつけた。
・
眩しさを感じて、ゆっくりと目を開けた。
隣を見ると、昨夜の男の人が目を閉じて静かな寝息を立てていた。
わたしはその人の肩に頭を預けて眠っていたようだ。
気づかれないようにそっと頭を上げて、車のドアを開ける。外に出ようとした、その前に。
パシッと腕を掴まれた。
青白い男の人の手が、わたしを行かせまいとものすごい力で握ってくる。
「いた……っ」
わたしは小さく悲鳴をあげた。
「……いかないで」
か細くて、力無い声だった。
普通なら聞き取れないくらい小さな声がわたしの耳に入った。
もしかして、起きてた……?
そう思って彼の顔を覗き見たけど、どうやらそうではなかった。