この恋、最後にします。
「俺の日本酒でも飲むか?」
「へ?」
「へ?じゃないだろ!間接キスにタジタジか~?」
今日一番の大きな笑い声だろう。
3席となりのグループの成宮くんと細野主任にまで聞こえたようで、皆がこちらを向いた。
柏木さんの苦笑いは私の顔を映してくれてるかのようだった。
「課長飲みすぎです~」
一つ年下の柏木さんに助けてもらう始末。
これじゃあ私、ホントに使えない派遣社員じゃないか。
朝の被害妄想が現実になってしまっていることに、私は悔しく感じた。
「ん・・・泣いてるのか神子谷ちゃん」
「え・・・」
「いやいや、それは面倒だからやめてくれよ」
急に酔いがさめたかのように、呆れた声だった。
「いや、別にこれは・・・ドライアイっていうか・・・」
自分でも笑ってしまうような誤魔化し方に、悲しいのか可笑しいのか分からない変な感情に駆られてる。
だから、歓迎会とか、こういう飲み会には付き合いたくなかったのに。
「おーーーい、神子谷泣きまーーーーす」
いつからこんなにも落ちこぼれに、ダメな意味で注目されてしまう人間に。
ああ、私はいつもこうだ。
今の自分の在り方に、生き方に、疑問をもっては否定してしまっている。
「いやあの」
「・・・!?」
俯いた私のすぐ横から声がした。
とても頼りがいのありそうな声が。
「ほんとにドライアイかもっす」
たくましい顔で、真剣な声でいうものだから私は思わず涙をこぼしてしまった。
「いや、成宮く・・・」
流すのは我慢していたのに。
彼のおかげで、涙腺が緩くなってしまったのだ。
涙が止まらない。
「めちゃくちゃ重症・・・?」
「いやっ、これっ、重症かもね・・・」
笑いながら私が答えるものだから、周りも安堵したように、課長を「びっくりするじゃないですか~」と冗談で責める。
課長も「悪い悪い、飲みなおすか」といい、事は一瞬の出来事として収まる。
「大丈夫ですか、神子谷さん」
「うん、ごめんね。席戻っていいわよ」
「そこはありがとうって言って」
「ありがとう・・・」
「ん、どういたしまして」