この恋、最後にします。
「知り合い?」
細野主任は私に問いかける。
「・・・はい。あ、えっとこちら最上汐里ちゃん。成宮くんのお友達だよね?」
「いやいや、紹介とか普通しないでしょ。プライバシー」
「あ、そうだよね。ごめんね」
この光景に見かねたのか、細野主任が作り笑顔のまま、私の前に立ち、挨拶をする。
「俺は、細野薫です。神子谷と同じ職場の人間です、上司やってます」なんて言って笑う。
「へえ、でもこんな夜まで一緒にいるってことはあれですよね?」
「ん?きみ、なんか勘違いしてるようだけど」
細野主任は優しく言っているようで、表情も笑顔だが、どこか狂気を感じさせる。
あのビジュアルの細野主任に、こんな風に問い詰められたら怖気ついてしまうのでは・・・と心配したのも束の間。
汐里ちゃんは微動だにせず、細野主任を見つめる。
「なんだ違うんですね、ラッキーとか思っちゃったのに」
あえて成宮くんの名前を出さない汐里ちゃんに、私が先に怖気づいてしまっている。
「行こう、神子谷」
「えっちょ、ちょっと!?」
細野主任は私の腰に手を当て、私の家の方向へと歩き出す。
汐里ちゃんを置いて。