この恋、最後にします。
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インターホンを鳴らす。
懐かしい音が耳に残り、深呼吸する。
何のために実家に行くのか、とか、この際もうどうでもいい。
ただ、久しぶりに実家に帰って、親に現状報告といった雑談をしに泊まるだけ。
昨晩のことはなかったことにすればいい。
成宮くんのことを思い出したって、成宮くんとの関係って、告白をされたってだけでそれ以上でもそれ以下でもない。
他の人に隠す必要だってない。
でも、好きだけど離れたことだけは蓋をする。
いつかで見たことがある。
相手と自分の歳に5つ程の差がであれば、恋愛は慎重に行わなくてはならない、と。
私には、その覚悟もないし、資格がなかっただけだ。
私はきっと、日常に刺激が欲しかっただけで、その中身が欲しいわけではなかった。
「はーーい」
声がする。
懐かしい優しい声が。
ガチャッと玄関ドアの開く音がして、私は同時に顔をあげる。
「くらげぇ!」
驚いた声とともに、驚いた表情の母の姿。
「ただいま」
母の顔を見ただけで、全部の気持ちを伝えたくなってしまう。
喝を入れるような母ではなかったし、私もそれを分かって今日来たのだ。
就職試験に失敗した時も、なにも言わずに、ただ自分がしたいことを静かに見守ってくれていた。
私は母に何を求めているのか、頭では分かっているのに整理ができない。
だけど私は、そんな母に向かって「会いたくて」と言った。