この恋、最後にします。
「くらげが黙ってるってことはそういうことなんでしょ。
いいのよ、想ったって」
「でもお母さん、私自信がないから」
「そんなの知ってる。私もそうよ」
「違うでしょ、もう自信がついたんでしょ。
お父さんみたいな人が相手なら性格とか気にしなさそうだもん」
「そんなことないわ、自信なんて今もまだまだよ。
ん~そうね、何が言いたいかと言うと
私はパパと出会って幸せ。だけど、時々不安になることもあるわ。
よくいう話で、自分を好きになれないと誰かのことも愛せないっていうでしょ?
まだ私も自信がない、だけどパパから愛されていることには自信があって、事実よ。
パパからもらえる愛をバネに自信をつけてる最中よ。
すぐに自信なんかつくものじゃない。
くらげはこういうの嫌だろうけど、自信がなくても好きな人と一緒になることも考えてみなさい。
幸せを感じるのはそこからでも十分なのよ」
「そんなこと」
「大丈夫、くらげはこの私が可愛く産んだもの。
素敵な人が近くにいるはずよ」
「近くに・・・」
「今、思い出した人よ。
ふふ、きっとね」
そう微笑み、母はクリームソーダを飲み干した。
冷めたブラックコーヒーにようやく口をつけ、一息つく。
「お母さんって、クリームソーダ好きだったっけ?」
「ん?いや?…あれ?覚えてない?
くらげがまだ小さかった頃、よくここでクリームソーダをくらげが飲みたがって何度か頼んだことがあって。
でも、くらげったら飲み干せなくて、いつもパパに残りを飲んでもらってたのよ?」
「そうなの?」
「そんなこと、急に思い出しちゃって、私も飲みたくなっただけなの。
ああ、2人とも仲良くこんな美味しい飲み物飲んでいたのねって思ったわ」
「お父さんが・・・」
「パパ、寡黙な人だけど結構愛情深いの、くらげってば知らないのぉ?
さっきはあんな嫌味言ってたけど、今朝なんかすっごい慌てっぷりで、絶対に結婚相手とか連れてきたら断るからな!ってうるさくて、お寿司もあれは、くらげがただお寿司が大好物だから頼んだだけで、お祝いとか関係ないのよ」
「なにそれ、変なの」
「だから、許してあげて。
もう一回、家に帰っておいで」
母は私を真っすぐ見つめるのだ。
「そうする」と言って、足元で母と靴がふれあい、2人で軽く微笑んだ。