この恋、最後にします。




「ねえ雪、今日一緒に帰れる?」



フルーツジュースを飲み干し、空になった紙パックをプラプラと持ちながら汐里が言う。



「俺明日実家に一旦帰るんだよ。寄り道しねえぞ?」



「え、なんでよ。花火大会行こうよ」



「だと思ったよ、俺は行かないよ。ケントとユウタと行きなよ」



2人の座る方を見ると、お互い違う方向を見ながらニヤニヤしている。



こういうのも、ほんと、面倒だ。



「俺パス」「俺は彼女と行くからパス」そう言われ、汐里の方を見ると、いいよと言われるのを待ち望んだ表情をしていた。



「・・・分かったよ」



こういう押しに弱いところも、全部全部面倒だ。



「・・・雪さ、バイトやめてから表情暗いから、今日くらいあたしが楽しませてあげんね!」



花火大会、くらげ来るのかな。



会ったらどうしよ。



ちゃんと話したりできるのかな。



「聞いてる雪?」



「え?ああ、じゃあ授業あるから」



僕の頭の中にはくらげしかいないみたいに、おかしくなる。



周りからどれだけ否定されたって、この感情に蓋をすることなんかできない。



くらげが見せてくれた表情も全部、嘘偽りのない綺麗な出来事に過ぎないから、僕はこの気持ちに嘘をつきたくない。



諦める気ではいたのに、そんなことできるわけがなかった。



会えなければ会えないほど、好きが増してしまう。



この一度きりの人生でくらげに出会えたことが奇跡だから、僕はこの恋を諦めることができない。



会いたい。



くらげに、会いたいです。




 



< 119 / 142 >

この作品をシェア

pagetop