この恋、最後にします。
「ねえ雪、今日一緒に帰れる?」
フルーツジュースを飲み干し、空になった紙パックをプラプラと持ちながら汐里が言う。
「俺明日実家に一旦帰るんだよ。寄り道しねえぞ?」
「え、なんでよ。花火大会行こうよ」
「だと思ったよ、俺は行かないよ。ケントとユウタと行きなよ」
2人の座る方を見ると、お互い違う方向を見ながらニヤニヤしている。
こういうのも、ほんと、面倒だ。
「俺パス」「俺は彼女と行くからパス」そう言われ、汐里の方を見ると、いいよと言われるのを待ち望んだ表情をしていた。
「・・・分かったよ」
こういう押しに弱いところも、全部全部面倒だ。
「・・・雪さ、バイトやめてから表情暗いから、今日くらいあたしが楽しませてあげんね!」
花火大会、くらげ来るのかな。
会ったらどうしよ。
ちゃんと話したりできるのかな。
「聞いてる雪?」
「え?ああ、じゃあ授業あるから」
僕の頭の中にはくらげしかいないみたいに、おかしくなる。
周りからどれだけ否定されたって、この感情に蓋をすることなんかできない。
くらげが見せてくれた表情も全部、嘘偽りのない綺麗な出来事に過ぎないから、僕はこの気持ちに嘘をつきたくない。
諦める気ではいたのに、そんなことできるわけがなかった。
会えなければ会えないほど、好きが増してしまう。
この一度きりの人生でくらげに出会えたことが奇跡だから、僕はこの恋を諦めることができない。
会いたい。
くらげに、会いたいです。