この恋、最後にします。
花火大会なんて、中学生のころに友達に連れられて行ったきりで、あまり思い出に残るイベントではない。
だけど変に期待してるし、楽しみという気持ちがあることは確かだった。
隣で歩く汐里は分かりやすく気分が良いようで服装もメイクもいつもと違かった。
いつもと違うねなんて言葉にしたところで思わせぶりになってしまうので、今日は言わない。
「ねえ、人だかり、見えてきたね」
汐里は僕の服の裾を引っ張る。
「そうだね」
それに応えることができない僕といて、汐里は本当にいいのだろうか。
「雪、なにか食べたいのとかある?あたしはね、りんご飴!」
「汐里、顎外れちゃうっしょ」
「ちょっとー!!」
汐里は高校からの仲だ。
同性から嫌われていた汐里に声をかけたのが僕だった。
教室の端で一人、泣いていた汐里に声をかけた。
僕だっただけだ。
汐里は分かりやすい子だから、汐里の考えていることもよく気づいてしまうし、だけど気づいていないふりをするのも悪いと思って好意を持っていないと分かるように接してきたのに、汐里には関係ないようで、大学までついてきてしまったのだ。
こういう子だ。
この性格が同性から敵対視されてしまうのだ。
ただ、真っすぐな性格なだけなのに、それを良しとしない人間が、汐里のことを仲間外れにしてきた。
「雪ってさ、花火、ちゃんと場所取りするタイプ?
それとも離れたところで見るタイプ?」
「気にしてないよ」
「そっかぁ・・・あたしは、花火、初めてだなぁ」
「え?初めてなの?」
「うん、行ったことない。誘われたことないし、誘ってもドタキャンされちゃうの」
そう笑って言う汐里をみるのは何回目だろうか。
くらげならこういう時、なんて言うんだろう。