この恋、最後にします。
花火大会を見に来た人たちの群れからも離れ、私たちは程遠い海沿いにきた。
細野主任は自然に私の腰に触れていた手を離す。
「花火、見えないとこ来ちゃったな」
「気を遣わせちゃったみたいで・・・ほんとに、ごめんなさい」
「ん?花火の音は聞こえるみたいだね」
聞こえているはずなのに、私の声、聞こえているはずなのに、こういう時も細野主任は細野主任らしい対応をする。
「ですね・・・」
「うーーーん」と、細野主任は何を思っているのか、海を眺めるために足を止め、瞳の中に海を映しだす。
「主任?」
「・・・・・・」
「あ、あの?」
私は細野主任の顔の前で、手をひらひらとさせ、アピールする。
すると細野主任は「ふっ」と笑い、口を開く。
「・・・ほんとはさ、ほんとは俺、今頃花火の音に任せながら告白するつもりだったんだけど」
「え!?」
「そうはいかないみたいだな」
「あっえっ、えっと」
「ははは、そんな分かりやすく動揺されると、困るな」
細野主任は目尻にしわを寄せて、笑う。
困ったように、笑う。
「神子谷、聞いてくれるか?」
「え!あ!はい・・・」