この恋、最後にします。
「俺と」
私はそのまま細野主任を真っすぐ見つめる。
見つめて微笑む。
私は細野主任と一緒にいると、自分に自信が持てているような気がする。
だから、今、私が待ち望んでいる言葉が聞けるかと思うと、途端見つめたくなるものだ。
「いや、やっぱやめとく」
「・・・え?」
「なんかやっぱだめだな」
視界が真っ黒に染まっていく。
なんだろうか、私はまたなにか困らすような、気を遣わせるような言動をしてしまったのだろうか。
「だめって・・・?」
「うん、やっぱちゃんとしなきゃダメだろこういうの」
ちゃんとしなきゃいけない事って、何。
もしかして成宮くんのことだろうか。
私がまだ未練を残して告白をなかったことにしたこと、勘づかれてしまったのだろうか。
「神子谷はまだやることあるだろ」
「え・・・それは、つまり」
「つまり、社員登用試験という大事な時があるだろ」
「え!あ!うわ!」
「なに、どうしたんだ」
「いや、なんでも」
やっぱり、やること言うこと全て、細野主任は細野主任なのだと分かる。
「その大事な試験が終わったら、神子谷に伝えたいことがある。
その時は、聞いてくれるか?」
「はい、もちろんです」
私は安堵し、細野主任をもう一度真っすぐ見つめることができるのだ。
優しく微笑む細野主任に私は少しでも惹かれているのだろうか、なんて思ってしまう罰あたり。
私の幸せに、果たして恋は必要なのか。
私の自信に繋がる全ては、恋であるのか。
違う気がするという気持ちと、恋が全てという気持ちが混じり、私はいくつも葛藤を繰り返す。
だけど、もういいかもしれない。
愛されたい__________
その気持ちを受け止めてくれる人に、ようやく出会えた気がしたから。