この恋、最後にします。
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成宮くんの傍から遠ざかってから数分たち、私は居場所という居場所もなく何故か本日の主役の細野主任の横にいる。
なんにも話すこともなく、無言の時間が流れていく。
私はそれが気になるので、咳ばらいをしたり伸びをしたり色々しているが、細野主任は何を思っているのか、隣でボーっとしている。
だけど、少し酔いが回っているのか、シャツのボタンを開けたり机に頬杖をついたりしていた。
だがしかし、喋らないな。
さっきまでどうしていたのだろう。
きっと隣に座っていた成宮くんばかりが、細野主任を差し置いて喋っていたのではないか、と思ってしまう。
ここはひとつ。
話しかけてみようかな。
私も少々酔っているのか、普段思わないことを思ってしまっている、気がする。
「あの、前の店舗はどんな雰囲気でした?」
「・・・・・」
「・・・・・」
え・・・・・?
いや、え?
無視ですか?
無視?
私が言葉を発してから15秒は経ちましたけども・・・?
あの皆さん。今、私ちゃんと細野主任に話しかけてましたよね?
「あの・・・?」
「はい?」
本当に聞こえていなかったのだろうか。
冷静に返事をした細野主任に、返事を待っていたにも関わらず驚いてしまう。
「なんか言いました?すみませんなんか」
「いえ、つまらないことですので」
急に自信がなくなって、なかったことにすることにした。
「随分なめられてるみたいですね」
「え?」
細野主任の視線の先には成宮くんがいたことで、不意にも細野主任の言った言葉を理解してしまう。
「まあ・・・いいんです別に」
「派遣だって聞きましたけど、優秀とも聞いてますよ」
「何の話・・・」
「派遣だからとか、正社員よりも下だとか考えてはいけませんよ。堂々としたらどうですか」
「だから何の話です?」
鼻で笑う細野主任に、知らぬ間に睨んでしまっていた。
「下ばっかりみてるからなめられるんですよ。見ていてイライラします」
「そんな注意、する必要ないですし、ケッコウです!貴方が主任ということは重々承知ですが、私にそんな言う権利ないと思います」
「結構言えるんですね、良い調子だ」
「は!?」
私から細野主任から離れてやりたかったのに、また言い残して私に背を向けて違う場所へと行ってしまった。