この恋、最後にします。
「細野主任、止めてください」
「なんで?」
「面接より優先したいことがあります」
「成宮が絡んでるのか?」
「・・・はい」
「じゃあいいじゃん、面接が終わってからでも大丈夫でしょ」
「いえ、ダメなんです。今じゃないと」
「そんなに成宮のことが気になるのか?」
「そうじゃないです」
「じゃあなんで面接諦めてまで優先する?」
「困ってる人がいる、それだけじゃダメでしょうか」
「ああ、ダメ。ダメだ。面接で最後なんだぞ!?
何考えてるんだ、ほんとにッ」
細野主任は、ハンドルをギュッと握り返し、ハザードランプをつけて少し乱暴に道脇に停める。
溜息をつき、ハンドルを握っている両手に額を寄せ、下を向いたままこちらを見てはくれない。
「細野主任・・・」
「行ったら?」
「・・・ありがとうございます」
「お礼されることしてない、もう諦めて派遣のまま恋でもなんでもして、全部諦めたらいい!」
「・・・」
言い返すことができずに、怖い表情をした細野主任を見つめることしかできない。
私は馬鹿みたいに目に溜まる涙をグッと堪えている。
怖いから泣いたとかじゃない、この涙はどんな意味なのか私でも分かるわけがなかった。
涙を拭き、私は車からでて、先ほど通り過ぎた女の子の歩く方向へと足を運ぶのだ。
最後に私を見ることはなかった横顔の細野主任の顔が忘れられない。
________泣いていたからだ。