この恋、最後にします。




私はただ走る。



あの子を追うために。



雨粒が髪も顔も服も靴も全てを濡らして、雨が痛いほど心をも叩きつけるのだ。



私、間違ってないよね・・・?



いつまでも降り続ける雨の音に私は周りの音も遮断して走る。



私には何も残らないことが分かった今、ただただ追うことしかできないのだから。



走り続けてようやく先ほど見かけた女の子が視界に入る。



「・・・いた」



小さく呟き、一度息を整える。



その途端、道路に見覚えのある車が目に入るのだ。



その車は軽くクラクションを鳴らす。



雨で中が見えない。だけど、確認する必要なんかなくて・・・。



車が止まり、すぐに運転席のドアが開く。



「乗って」




「主任・・・」




「こんな雨の中、一人残すわけにはいかないだろ。乗って」



「・・・いえ、大丈夫です。私が決めた我儘で細野主任に迷惑かけるわけにはいきません」



強い雨のせいできっと私のこじらせる原因の言葉は届いていない。



それでも細野主任は関係なしに、雨に嫌気を感じながらも私に傘をさしてくれる。



その優しさを私は結局返すことができなかった。



それなのに・・・



「どうして・・・」



「乗って」



次は強引に私の肩を持ち、車へと誘導させる。



先ほどと同じ位置に座っているのに、こんなにも雰囲気が変わるものなのか。



この何とも言えない空気に、細野主任はもっとこの場から離れたいはずだ。




「あの子、曲がったけど。
あの子追えばいいのか?」



「・・・はい」



「わかった」



「でも・・・!」



「もうこれしかできないから」



「え?」



「さっきはごめん。言い過ぎた。
神子谷に気持ち伝えることができないって分かった瞬間やけになった。
・・・でもカッコ悪いよな、ほんと」



「謝らなきゃいけないのは私で、本当にいつも」



「謝らないでいいよ、余計にカッコ悪くなっちゃうでしょ」



「・・・・ごめんなさい」



「謝ったな今~~~」




細野主任は笑いながら言うけど、きっと怒っている。



全部壊したから。私が。



その私を助けようとするなんて、細野主任は優しすぎる。



その優しさに何度も甘えていた自分が起こしたことだ。



これが終わったら、会社をやめて全て捨てるべきか。



人の気持ちを簡単に崩してしまう私に一体この先何ができる?



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