この恋、最後にします。
「や、ちょっと先に説明してくれないと」
「無理」
「ええ!?」
「当たり前に無理だよ」
「いや、それ成宮くんの勝手だよね?」
「いーから、こっち」
「ちょっと!」
成宮くんはベッドから勢いよく起き上がり、私の腕を引っ張る。
よくそんな朝から動けるな・・・と感心しつつ、いまだこの状況が掴めないでいる。
腕をつかまれたまま、到着したかと思えば
「成宮くんさあ・・・」
視界にうつるのは、キッチンの周りのゴミ!ゴミ!ゴミ!
仕舞いには食器までシンクに置いたままの始末。
「成宮くんって一人暮らし?」
「まあね」
こんなに広い家に・・・なんて思ったけれど、踏み込んではいけない気がした。
「ご飯食べる前に、まずはここなんとかしない?」
「やってくれんの?」
母性本能をくすぐるその表情にとろけてしまいそうだが、ここはひとつ鬼になるべきか。
「一緒にやるよ、ほら」
成宮くんに、お母さんみたいとか年寄りらしさを感じられても仕方ない。
これは、私が許さない。
事務服のままの私は、腕まくりをし、シンクにたまった食器から片付け始める。
と、一つ目のお皿から手を付けた瞬間に成宮くんが私の横に立つ。
「どした?」
「あー神子谷さん、俺やるんで休んでて」
「え?」
まさか、そんなことを言われると思っていなかった私は水を出しっぱなしのまま固まる。
「なんか神子谷さんって俺と同い年っぽくみえるから、やってもらうのなんか嫌だなって」
「え・・・・っと」
これは・・・どんな表情をしているのだろうか。
返事の言葉が見つからないず、まだフリーズしたまま成宮くんを見つめる。
「あんま見ないで恥ずかしいから」
「・・・ごめん、ね」
ダメだ。
私ダメだ。
心臓がもたない。
かなりの速さで動く鼓動に耐え切れず、胸がキュンとして苦しい。
これは初めての感覚だった。