この恋、最後にします。
「いやいや、いいって一緒にやった方が早いよ」
パチッと途端に目が合うと、一秒も立たずに逸らしたのは、私ではなく確かに成宮くんだった。
目を合わせずに、成宮くんは口を開く。
「か、帰ります?
せっかくの休みなのにこんななんか、俺と一緒にいるとかあれだと思うんで」
「あっああ、そう、そうだよね?
休みの日に邪魔しちゃ悪いしね、私も用あるの忘れてたよ」
ふたりしてアハハと乾いた笑い方をする。
お互い動揺しているのか、私だけが動揺しているのか。
帰りの提案された私が一番戸惑っているに違いない。
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「じゃ、じゃあ帰るね?」
玄関先でもう一度確認をしたつもりだったが、成宮くんの表情はさっきと変わらなかった。
がめつい自分に恥ずかしさを感じ、すぐに成宮くんから視線をはずしドアノブに手をかけようとした瞬間
不意にフワッと風に包まれた。
「え・・・?」
ドアノブと手の距離が数ミリのところで、成宮くんの手が私の手を握っていた。
後ろから微かに聞こえる成宮くんの吐息に、私は動揺を隠すことができない。
「あの・・・成宮くん」
「静電気、くるかと思って・・・」
昨日の出来事が鮮明に思い出され、目を見開いてしまう。
成宮くんのまっすぐな行動と言葉が私の胸を確実にうったのだ。
一目惚れでもいい。
年下でも、なんだっていい。
私をこんな気持ちにしてくれる成宮くんなら、逃げることのない恋ができるかもしれない。
「すみません、あと、昨日は俺・・・
神子谷さんに言われて俺の家に運びました。
神子谷さんの嫌がることは一切してないから」
ゆっくりと手を放し、目が合わないまま成宮くんが言う。
「私が成宮くんに頼んだってこと?」
「はい、あと俺、昨日神子谷さんに伝えたことあるんですけど覚えてないですか?」
「成宮くんが私に・・・?」
「はい・・・」