この恋、最後にします。
「ごめん、ちょっと水で濡らすな」
家についてさっそく、私をベッドに座らし、多少服についた汚物を拭いてくれた。
この出来事を思い出して思ったことは、あんなに盛大に吐いたにも関わらず、服を全て洗濯しなければいけないほどのやらかしは回避したということ。
人にこんなにも迷惑をかけたにもかかわらず何を言っているんだって話だけれども。
成宮くんに裸を見せるわけにはいかないじゃないか。
「よし、おっけ」
「んーーーねむ」
「ありがとうって言えよなマジで。
もうここで寝ろ、はよ寝ろ」
「ベッド、いいのぉ?」
「ハッほんとに酔ってんのかよ、律儀か」
成宮くんは、私を馬鹿にしたように笑う。
「・・・・ベッドォ・・・」
「なんだよそれ、ちゃんと酔ってんのな」
ギシィ・・・
また鼻で笑って、成宮くんは横たわった私の隣に座る。
ここまでの出来事だと、成宮くんが年上で私はまるで年下である。
「神子谷さん俺、神子谷さんのこと気になるわ」
「・・・・・はい・・・」
「はいじゃないっつーの、適当に返すなよな」
耳の赤くなった成宮くんをふかふかのベッドから見えた、この記憶だけは曖昧じゃない。
だけど、あの時の私の記憶は幻覚でも幻聴でもあり得ない話ではないから、堂々と発表できるものではない。
でも成宮くん、私に何か伝えたと言っていた。
記憶というのは、都合よくできていて、ほんとに情けないけど、これが本当だったらいいのになって思ってしまうの。