この恋、最後にします。




---------------



いつものように事務服に着替え、納豆とキムチを頬張る朝。



私は昨日の出来事を特に何事もなかったかのように表情を整え、仕事モードへと切り替えるのに必死だった。



必死なのだ。



昨日、終わりにしたのは自分なのに、スマホの通知が気になって仕方がなかった。



だから、必死に対策を考えて、彼のメッセージの通知だけをオフにしたり数時間はスマホを見ないようにした。



でも、それでも、そのおかげで余計に気になって台無しとなり、結果今日になってしまったのだ。



「確か今日は、出勤だな」



この通り、口に出してしまうほどの自分の中での彼の存在の大きさに呆れてしまう。



いつも通りメイクしてるつもりなのに、諦めたいはずなのにメイクもいつもより気合が入っているように感じる。



マスカラもいつもならブラックなのに、甘めなブラウンを選んでしまうことも。
ラメなんか使わないのに、グリッターを涙袋に少し取り入れてしまうことも。
いつもマットリップなのに、色気あるティントタイプを使おうとすることも。



全部自分を見てほしいがためにしていることだ。



成宮くんに可愛いと思われてほしいから。



分かりやすくて、さすがに参ってしまうな。



でも今日は、成宮くんが柏木さんに対する想いがどれほどなのかよく分かる一日になるだろうから・・・と肩がとたんに落ちる。



私の気持ちを抑えるくらいなら、酔った勢いでキスでもしとけばよかった。



そんなことできるはずなんかないし、拒否されること間違いなしの関係のくせに何を言っているんだ。



頬を叩く。漫画のように。



ただ、痛いだけ。



頬も、手も、心も、感情そのものも。



私、今日やっていけるのかな。



 
< 35 / 142 >

この作品をシェア

pagetop