この恋、最後にします。
----------------
結局、連絡先を交換することができたのか分からない。
他の社員たちがゾロゾロ出勤し始めるころに私も事務所に戻ったのだが、柏木さんの姿はなかったし、成宮くんもお店へ、力仕事のヘルプに行っていて様子も見れていない。
「おはよーさん、神子谷さん」
居心地悪そうに話しかけたのは、やはり課長であった。
あの飲み会以来、話しかけられたのは今日が初である。
「あ、おはようございます」
「あの~今日、売り場のレイアウトとか変更するみたいで、神子谷さんの意見も聞きたいみたいなんだよ。
だから、その~店のほう・・・行ってみるか?」
「え・・・」
ここに派遣として勤めてから初めてだ。
お店の方に足を運んでいいと許可をでたのは。
私の仕事は、家具や小物をメインとして販売しているお店を、陰で支えるような納期やクレームの処理をしている。
そんな私が、お店に行ってもいいと言われるなんて。
ただ、何故。
「私行っていいんですか・・・?」
「か、柏木ちゃんが・・・さんが、なかなか帰ってこないから」
「ああ、それで・・・」
「いやっなんというか、柏木さんの代わりとかではなくて・・・」
「大丈夫です、課長は嘘がつけない人だって分かってますのでそれ以上は何も」
「ああ・・・・た、頼んだよ」
「はい、いってきます!」
それでも一歩前進したということには変わりなかった。
まだ、辞めなくてよかった・・・と感じる。