この恋、最後にします。



「わたしも一緒に行きます」



スッと横に現れたのは、綺麗に佇むスーツ姿の細野主任。



あの嫌味を言われてからまともに顔を見れずにいた。



「ああ、そうか。店の方もその方が助かるな。頼んだよ二人とも」



「はい」



「はい・・・」



細野主任がこちらに顔を向けたから、咄嗟に顔を背ける。



「おい、なんだその顔は」



「イエ、ナンデモ・・・」



体が強張る。細野主任は私にとってそれほどの存在だと再確認する。



「行くぞ」



「あっあの、なにで・・・」



「車だよ、隣座って道覚えてくれ」



「道くらい私も分かりますよ」



「ははっそうか、悪かったな」



なんなんだ、と、細野主任の笑顔がいつもと違った雰囲気で、私は踊らされてしまう。



今日は本当に、調子狂う日なんだ。



カモの親子になった気分で、親の細野主任の後を急いで追う。




 
< 39 / 142 >

この作品をシェア

pagetop