この恋、最後にします。




ああ、やってしまった。



勢いよく飛び出したのはいいものの、柏木さんはどこのクレームの家に行ったのか聞くのを忘れてしまった。



様子を確認するためにも電話しておこう。



さりげなく、聞けばいい。





prrrrr.....

prrr.....




『・・・全く誠意が感じられないんだよ』



電話越しに聞こえる威圧的な男性の声に、私も少し身構える。



『俺はな、この商品が届くまでどれだけ待ったと思う!?
一か月半だぞ、確かにノルウェーからの取り寄せだと聞いて承諾したがな、たった一脚の椅子を待ったにも
関わらず、なにも言わないことがあるのかね!』




「・・・・柏木さん、これずっと」



こんな言いがかりをずっと聞いてるんだ。



電話越しに柏木さんのすすり泣きが聞こえる。



私が早く行かなければ。



焦るな。深呼吸。



一か月半・・・取り寄せ・・・ノルウェー・・・一脚の椅子



確かこの人、催促の電話がきたときもこんな声だったような気がする。



私が対応した。



分かる。



この人・・・



「今から事務所に戻って情報みれば住所も・・・・」



いや、こんなことしていたら柏木さんを助けるのに一時間もかかってしまう。



グッと拳に力を入れ目を瞑り、深呼吸する。



私の連絡先には、成宮くんの名前しか見当たらなかった。



課長の連絡先も、他の派遣社員の連絡先も知らないことに気が付く。



 
「だめだな、私」



 
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