この恋、最後にします。
「失礼いたします。鈴木様、わたくし・・・」
45度の角度できちんとお辞儀をし、顔をあげる。
見上げれば、鈴木様は想像通りのおじいさんであった。
後ろには困った顔の柏木さんの姿。
とりあえず無事を確認することができ、よかった・・・と、肩をなでおろす。
「改めまして、神子谷と申します。
この度は鈴木様に大変・・・・・」
言葉を続けようとするも鈴木様は「いいからいいから」と菓子折りを乱暴にとり、私を柏木さんの隣に座らせる。
とても乱暴だった。
これだけでもすごく怖いのに、柏木さんはあんなに長い時間・・・怖かっただろうと同情するのが精一杯である。
なんて、そんな弱気になってどうする、神子谷海月。
私は、柏木さんを助けに来たんだ。
どうして私はいつも、決めたことをいちいちネガティブに変えてしまうのだ。
自分が決めたことに、無論、後悔はない。
「水ようかんなんてどうでもよくてね・・・」
鈴木様が話そうとすると、横で柏木さんが震えだす。
「神子谷さん、どうして、だめよここは」
か細い声と、小さくなる体。
「柏木さん、気づけなくてごめんなさい」
震える手を私は握る。
もちろん指先はヒンヤリと冷たく、どことなく緊張が伝わってきて、私はもう一度強く握った。
「あんた、よく見ると美人だし、まあ気が強そうだったから最初は帰そうと思ったんだがね?
私はね、良いこと思いついたんだよ」
眉間にしわをよせる。
伝わるこの感じ・・・・柏木さんをよく見れば服装が少し淫らになっていることに気づく。
細野主任の言っていた通り、女の私が行っても頼りないとはそういうことなのだろか。
でも、私は、そういう言葉があまり好きではない。
「や~~一度やってみたかったのよ。
2人の美人に奪い合われちゃうのっ」
私たちが座るソファの前で仁王立ちする鈴木(様)は異様に気持ちが悪い。
柏木さんは既にもう泣き始めていた。
タンクトップとパンツだけの鈴木(様)は、私たちに近づく。
「神子谷さんっ・・・!」
「大丈夫」