この恋、最後にします。
後ろから忙しない音が聞こえる。
パトカーの音と、私を追いかけたのか、成宮くんの足音。
下を向いてると、成宮くんの靴が視界に映る。
「ジジイは言いすぎじゃない?」
「あーーーそうか?」
何か言いたげの成宮くんが、全然口を開こうとしないから、私から話を切り出す。
「嘘、ありがとね。来てくれて」
「俺、必要だったのか分からないけど」
「あ~柏木さんから聞いた?」
柏木さんは警察と話をしているのか、傍にはいなかった。
「うん、さっきね」
「私ね、家が柔道一家っていうか、その護身術的なのもやってたりなんとかして・・・たまたま役に立ったっていうか・・・信じてもらえるか分からないけど嘘じゃないのよ」
そう言い、成宮くんの顔を確認すると、もちろん引かれて・・・はいなかった。
「すげえ、かっけえな」
目を輝かせていた。
「そ、そう?」
世間一般的に、女性は男性に守ってもらえるほどの魅力が必要なのかと思って、ずっと黙っていたのに、まさかこんなにも早く成宮くんに打ち明けることになるなんて。
「でも怖かったよな」
「え?」
「こんなに手、震えてる。まだ」
急に触られることになる私の手。
すごく驚いてしまうほど私は恋愛において初心だということを実感する。
「あ、あ~ほんとだ、あはは、ほんとにびっくりだよね~真夏なのに寒いのかー!ってね、あはは」
ビックリするほど誤魔化し方が下手すぎて笑えてくる。
「強がるなって」
「え~?何言ってんの成宮くん。護身術、なめてるの~?」
「違くて」
「も~いいって、私は大丈夫だか・・・!」
グッと私の手を引っ張り、成宮くんとの距離は数ミリの近さになっていた。
ダメなのに。
これは、ただの思わせぶりだってわかってるのに。
分かっているのに、私の気持ちは、成宮くんとの距離がもっと近づけばいいのにって望んでしまうの、本当に嫌になる。