この恋、最後にします。
パトカーが家の前まで送ってくれたのだが、私は家に帰りたい気分ではなかった。
柏木さんの無事も最後まで見届けることができたし。
パトカーがいなくなったのを確認し、のぼり途中の階段で足を止めた。
「コンビ二、行こっかな・・・」
「ああ、でも」と、会社に持って行っている重たいバッグを目にし、これだけは家に置いてから行こうと決める。
二階までの階段をのぼった私は、目にした光景にまたもや足を止めることとなる。
「うっそ・・・だ」
「よう」
しゃがみこんでスマホを見ていた成宮くんが、照れくさそうにこちらに手を振る。
「どうしたの、なんで」
「いや、課長が様子見てこいって」
「家・・・」
「え?」
「いや住所」
「ああ、安心して。課長が教えてくれた」
「いやプライバシーガバガバだね」
「なんだよ、せっかく来てやったのに」
「いやだって・・・」
「やならもう帰るよ、中、入って。それだけ見届けさせて」
「いいよ、私これからコンビニ行くんだから」
「は!?」
さっきまで優しい顔していた成宮くんの表情が一気に怪訝そうになる。
「な、なに。大きな声出さないで、迷惑でしょ」
「大きな声出させんなってんだよ。今日何されたか分かってんのかよ」
「いや、私は何もされてないよ。心配なのは柏木さんでしょ?」
「柏木さんは細野主任が見に行った。俺が今心配してんのは神子谷さんな」
結構な怒られ具合に呆気に取られてしまう。
こんなにスラスラと私の言葉を返す成宮くんが意外で仕方がない。
「ごめんね、もう今日は外でないよ」
「信用ならねえな」
「大丈夫だって。あっはは、心配してくれるのは有難いけど、私もう大人なんだから」
「なんだよそれ・・・」
「ええ?」
「神子谷さんそういうの言わなそうなのにな」
「なんなの?さっきから、だから大丈夫だって。怒らないでよ」
「怒ってんじゃないよ、つっこんでるの」
「いや意味が・・・」
「もういい」
家に入ろうとした私の行き場を、成宮くんの右手が壁について邪魔をした。
私は気が付くと壁に背を付け、目の前には成宮くんの表情が見える。
身動きが取れそうになく、私はタジタジである。
「こういうの、されたら護身術使うもんなの?」
「っちょ、なに成宮くん、どいて」
「やだ、答えて」