この恋、最後にします。
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なんでだろうか。
なんで、7畳のワンルームに2人、座っているのだろう。
目の前にはニコニコしてこちらを見つめる成宮くんの姿。
「なんてことを・・・」
頭を抱えて、テーブルに肘つくのが精一杯であった。
「なんかごめん」と言い、成宮くんは笑う。
「ほんとにあの、あっあり得ないんだからね」
「今日泊まっていいの?」
「・・・はあ、ダメだよ。ご飯食べたら帰りなさい」
「なんで」
「親御さんが心配するでしょう」
「いや、俺一人暮らしな?」
「この前濁されたし」
「ああ、あれね」
そりゃあのシンクのお皿の溜まり具合もゴミも、やんちゃ大学生であれば納得のいく光景だ。
そんなことないが、成宮くんだとすれば一人暮らしだって聞けば、そうだろうな、と思ってしまう。
だからあの日、何も考えずに私を家に上がらせることができたのだろう。
無防備すぎる成宮くんが少し心配になる。
「頼む、泊まらせてお願い今日だけ!」
私はいろいろ振り切って行動してしまっていた。
勢いで上がらせてしまったが、何も考えていない。
大丈夫だろうか、私は。
家に誰かを呼んだことは初めてだし、ましてや異性なんか・・・。
成宮くんは本当に何も考えていないのか、いつもの調子である。
こういうこと、他の女の子にもしてるのだろうか。
さっきの壁ドンなんか、自然すぎたものね・・・
きっと慣れているんだわ。
思い出すだけでも顔が赤くなる。
「これはお礼で、その・・・変な意味はないから」
「どういう意味?」
くっそ~~~!かなり、むかついてしまう返答だが、ここは落ち着いて深呼吸する。
「ご飯、適当になんか作ってるから、お風呂入っちゃって」
「お、まじ?んじゃ」
「これ、服」
「なにこれ男物じゃん」
「いいからそれ着て」
「彼氏とかいんの」
「はあ?
いないよ、何聞いてんの早く入って」
「ふーーーん、一応ね。参考までにこれ誰のかなって」
唇を尖らせては、一瞬私の顔を見て笑った気がする。
気のせいだろうが、やっぱり成宮くんの考えていることが分からない。
「普通に私の。最近のメンズ服は女でもいい感じに着こなせちゃうようになってるからね。
参考になりましたか?」
「あーーなるほどね。じゃあお先に」
渡した服を上に掲げてひらひらとしてみせながら、私に背を向け歩き出す。
「っふう」やっと一人になれた私は、一瞬開放感を感じる。
緊張しているのか、表情筋が硬くなっている、気もする。