この恋、最後にします。
カチャッと音がする。
耳を澄ませていたからすぐ分かった。
あれ、やばいな。
この状況作ってしまった張本人の私の心臓が、あり得ないほどうるさい。
汗もかいてくる。
「あがったーーー、あっちぃーーー!」
いつもの調子の成宮くんに、私はやっぱり納得いかない。
私だけか、こんな緊張しているのは。
一瞬目を合わせたが、すぐに逸らしたのは間違いなく私だ。
濡れた髪が色気をまし、予想通りの格好で現れたからだ。
「もうすぐ、あの、できるから座ってて」
言葉が若干つまってしまうほど動揺している。
「・・・いや、手伝うよ」
筋肉なんて期待してはいなかったが、きちんと鍛え上げている身体に私はドキドキしている。
そんな状態で一緒に料理したところで、ハンバーグ丸焦げして私のハッピーハンバーグデイが台無しになってしまう。
わけのわからない事を言わないと、精神が持たない。
「いい」
よし、冷たく返せたぞ。
職場のバイトの子になんてこと考えているんだって話だからね。
理性を保つにはこうするしかないんだよ。
「冷たくすんなって」
早く帰ってもらう。
絶対に、なんとしてでも。
「え?ああ、いや、ごめん。でも、大丈夫だから座ってて」
「なんかあった?」
「あの、じゃあ言うけど・・・とりあえずちゃんと服着てくれる?」
目も合わせずに言うと、成宮くんが小さく馬鹿にしたように笑った気がした。
「へいへい」といい、気だるげに服を着始める。
「なんか神子谷さんってさ・・・」
「なに?余計なこと言うならやめてよね」
「俺にいつも怒ってるよね、俺、笑ってもらいたいんだけど」
確かに、と思ってしまう私も私だ。
「そうかも、なんか大人げなかったね」
素直にそう言うと、成宮くんは驚いたかのような表情をし、笑う。
「素直でいいね」
「上から」
「ほら怒る」
「・・・~~~ッ!」