この恋、最後にします。


「私の右横、デスク空いてるでしょう。ここ、荷物置いて」


「あ、はい。了解っす」


リュックサックは、見るからに学生のような雰囲気を醸し出される。


「よろしくね~」


私の左横からひょいッと体を乗り出し、柏木さんは成宮くんに挨拶をした。


「っす...」


「・・・・・」




えっ!?


えっえっ!!??


今、彼、柏木さんの挨拶を「っす」って返事した!?


柏木さんの顔をおそるおそる見ると、もう成宮くんのことは見ずに自分のPCに目を移していた。


なんだか、気にしてるのは私だけみたいで恥ずかしい。


「あの、これパソコン電源って」


「...ここ、押せば電源はいるよ」


「あ、了解っす」


2回目


「あ、あと荷物、どこに置けば」


「引き出し、下の引き出しなら入るんじゃない?厳しいなら、更衣室」


「了解っす」


3回目


「ペンとかって持参ですか?」


「いや、2階の物品倉庫にいけばストックあるから...あとで教える」


「うす、了解っす」


・・・4回目


「あとあの、お昼一緒にいっすか?一緒に食べる人いなくて」


「あ~いいけど私おべんと...」


「お弁当なんすね、おれ今日なんもなくて」


「...あ...そう」


「はい」


「...い、いやいやいや、いやいやいやいやいや」


「どしたんすか」


「一緒にって、ここは学校じゃないのよ!?
勝手に一人で食べてなさい」


「冷たいっすね」


距離感、難しい。


私ってば、年下と関わりにくい年齢になってしまったんだ、と痛感する。


誤魔化すように、髪を整え咳ばらいをした。


「お弁当、自分で作ったんですか?」


え?会話を続ける要素って、今ありました?


「ああまあ、はい」


「へえ、一人暮らしなんすか?」


「聞いてどうするの」


と、言ってしまったが彼にとって聞いたってどうも思わないだろう。


だってこれは彼にとって普通のコミュニケーションなのだから。


チャラチャラしたような陽気な子は興味のない人に対しても、興味あるような話し方をするのが得意である。


いつかの本に書いてあったのを思い出した。


「いやっ冷たすぎでしょ」


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