この恋、最後にします。
まさか、まさか、こんな少女漫画のようなことをされるとは思っていなかった。
と、興奮気味に私は名刺を受け取った。
かなり、浮かれていたと思う。
「裏にLIMEのID、書いといたんだ」
「へ?」
「くらげちゃん、最近ずっとシフト入ってて大変だよね。
今度さ、お疲れ様会でもしようよ」
「あ・・・おお。はい、是非」
結構、強引な人だと思ったけどこういう男性にも惹かれてみたいと思っていた。
安易な考えでも、誰かに好かれているってだけで気持ちの良いものだと気づくようになってしまった私は最低な人間に出来上がっていた。
佐倉さんのアピールは毎日のように更新されていく。
「くらげちゃんって好きな映画あるの?」
「怖い映画好きなの?いつか一緒に観て、くらげちゃん脅かしたりしたいな~」
「くらげちゃんっていつもどんな服着てるの?」
「僕、くらげちゃんくらげちゃんって名前言いすぎだよね?」
それを私は分かっていながら、好きになることはなかった。
好きになりたかったが、良い要素を探すたびに好きじゃないと気づいてしまう。
恋愛が向いていない人って相当な人だと思っていたが、それが私だとは思えなかった。
性格はもちろん穏やかで優しかった。
だが、外見は良くも悪くも、タイプになるような容姿ではなかったし、メッセージの中の佐倉さんと
カフェで直接話をする佐倉さんとはまるで違う人だった。
このままアピールをされてしまえば、いつかメッセージかなにかで告白をされてしまう。
この関係を利用して、自己肯定感を高めるのも最低だと思った私は、デートのお誘いも電話も全てやんわり断っていた。
その、やんわりがきっと彼を困らせ、苦しませていることは分かっていた。
取り返しのつかないことをしてしまった。
だけど私は、それに上回る最低なことをしてしまったのだ。