この恋、最後にします。
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成宮くんに仕事を教えるというものの、基本が分かるはずもなく、マニュアルを渡したり
会社内を案内したり、もちろん筆記用具を揃えるために倉庫の場所も教えた。
案内してる際には、他の社員さんが成宮くんと話したいがために廊下に立ち止まったりもした。
私はというと、成宮くんと社員さんが話している空間をなるべく邪魔しないように空気になったりしていた。
成宮くんがチラチラとこちらを見たりしてきたが、助けることもできず、知らないふりもした。
我ながら本当に最低な人間だと思う。
「へえ~、20歳なんだね~」
「そうっすよ」
「学校大変?」
「まあ、普通っすね。専門なんでこれから大変なんすけど」
「え~なんでバイト?」
「いやまあ、気分」
「でも、週に2回も入ってくれるんじゃ店も楽だよ~」
「ならいいっすけど」
「それにしても、かっこいいね」
「あ~髪型は自信あるっすね」
こんな会話を2~3回は聞こえてきたのを覚えている。
立ち話が終わると、成宮くんは「おまた~」と言って私の隣で歩き出す。
「いい人たくさんいるでしょ、ここ」
「ほんとに思ってるっすか?」
ほんの少し馬鹿にしたように笑いながら、成宮くんは私の顔を覗き込む。
「さっき、課長に俺の指導任されてた時の神子谷さんの顔やばかったすよ」
「はあ?どこが」
「こんな、こ~んな顔してました」
と、両手を使い、ツリ目にしてみせてきた。
「なんなの、ほんとに」
「怒った?」
「い・い・え」
「悪いね」
「・・・もう、なんなの」