この恋、最後にします。
落ち着いた声、知っている匂い、私が困っているときいつも助けてくれる人。
やっぱり、来た。
期待していた自分と、安心する自分。
両方が合わさって、力が抜ける。
「えっなに、なんですか君。僕なんにもしてないですけど」
鼻で笑い、成宮くんのことを邪魔者扱いするように手を払いのける。
でも、屈せず成宮くんは抵抗する。
「だーめだろ、その手離せって」
「いや部外者がなにさ。ねえくらげちゃん」
「成宮くん、ごめん」
「いや、心配だったから」
「なにいちゃついてんだよ!!くらげちゃん行くよ、映画はじまっちゃうよ」
肩の次は腕を掴む。
「佐倉さんお願い、謝りたいの話を聞いて」
「いいって、だからお詫びに早く二人でいようって」
「とまって佐倉さん!」
「なんなんだ本当に!!!!!」
急に声を荒げる佐倉さんに、私たち二人は驚きを隠せない。
「謝らなくていいよ・・・だからお詫びに今日から付き合ってくれればいいって」
途端に落ち着いた声に戻る佐倉さんは、分かりやすく情緒が不安定になっていた。
「できません・・・・」
「じゃあどうしてくれるんだ、僕の気持ちは」
「ごめんなさい、本当に反省してて」
「謝れ」
「ごめんなさい」
「利用してごめんなさいって言え」
「利用してごめんなさい」
「こんなんで許してもらえると思ってんのかよバカ女が!!!!!!」
「・・・・・ッ!!!!」
「それくらいにしろ」
手を上げる佐倉さんに咄嗟に止めに入ってくれた成宮くんも額に汗が溜まっていた。
「離せよ!!!!」
「お前別にくらげのこと好きじゃねえだろ」
「は?」
「自分のことを好いてくれていたくらげが離れてしまうのが怖くて執着してるだけなんだろ。
見てれば分かる」
「なーに言ってんの此奴。ねえくらげちゃん、こいつとどういう関係よ」
「職場の後輩」
「はあん?それでこんな熱くなるかよ。くらげちゃん思わせぶり上手だもんね」
「そんなことしてない」
「してんだろ」
「してません」
「マジで、むかつくね。くらげちゃんのその知らないふりする表情とか全部」
「おい」
隣の成宮くんはずっと佐倉さんを睨んでいた。
「・・・・・恋愛とかもう、しませんから」
「は?」
「恋愛しませんから私。だから佐倉さんとはもう関われないです」