この恋、最後にします。
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佐倉さんの件が一旦ひと段落したと思えた私は、少しだけ力が抜けた日々を過ごしていた。
でも、あの日から成宮くんが変わった。
変わったというか、なんというか・・・・。
「おはよ、神子谷さん」
「柏木さん、おはよ」
「今日もかね、成宮くんのアレ」
「ど、どうかしらね・・・」
"アレ"というのは、これから出勤する成宮くんを見ればわかるだろう。
バタバタバタ.....と足音が大きくなるにつれて、隣の柏木さんがフフッと笑う。
「わ、わたしちょっとコピー用紙もらってくる」
「だーめ、神子谷さんもう遅いみたいよ」
「えっ」
「くらげーーーー!!!!!!」
ゲッと苦い薬を飲んだかのような表情をしながらも、成宮くんは気にせず私の傍に近寄る。
嫌ではないんだけど。
「だから会社内では名前で呼ばないって・・・」
「くらげ、今から怒ること言っていい?」
「だから」
「明日一緒にどっか行こ」
沈黙もないまま、柏木さんと周りにいた社員が笑いだす。
かれこれ、これをし始めてから2週間は経ったと思う。
もうみんな慣れっこのようだが、私は本当に困っていた。
「成宮くん、ここは学校じゃないのよ。お誘いは会社の外かみんながいないときにしてちょうだい」
「俺もそうしたいけど、くらげすぐ俺の傍から消えんだろー」
すねた顔があまりにも可愛いのは変わらず永久だ。
「大学の友達とかとどこか遊びに行ったらいいじゃない」
必死にこの場をつなげるのに精一杯だ。
「え?大丈夫だよ、夜あってるし」
「昼間から遊びなさいよ」
「だってあいつら飲むことしか頭にねえんだもん、俺はジュースな」
「な、なら勉強でもしてなさい学生らしく」
「無理だよ普通に」
「なにが無理なのよ、もう」
「すぐ怒るなって」
会話がとまればすぐさま柏木さんが間に入る。
「成宮くん、今日も振られたね」
「柏木さんからも言ってやってくださいよ」
この場面を見るたびに思う。
あの時、成宮くんはどうして柏木さんと仲良くなりたいなんて私に言ったんだろう。
もしかして、私を嫉妬させようとしたのかな。
馬鹿ね。私が嫉妬なんてするものですか。
完璧嫉妬していた自分の記憶は、もうすでに消えていた。