この恋、最後にします。
事務所に戻った私と成宮くんをまるで待ってましたというように、課長が声をかける。
「今日歓迎会あるから、2人も参加するようにね」
はい、でました。
私の苦手とする歓迎会。
私みたいな派遣が歓迎会に参加する意味が分からない。
社員さんたちがどんな目で私たち派遣を見ているのかなんて、管理職の人たちは分かるはずがない。
「バイトなのに歓迎会してくれんの?」
ボソッと成宮くんがこぼした言葉に私は笑ってしまった。
「違うよ、成宮くんの3日前に他店舗からの異動で入ってきた主任の歓迎会ね」
「うわ、まじかよ。はず」
成宮くんは自分の発言が相当恥ずかしいと分かり、周りを見渡す。
そんな姿がかわいらしくて、思わずまた笑ってしまった。
「誰も聞いてないと思う、大丈夫よ」
「いやフォローされると逆にあれなんだけど」
成宮くんは本当に恥ずかしかったのか、耳が赤くなっていた。
「悪いけど、聞こえてる」
私たちが立っている間に割り込むかのように、本日歓迎される正社員の細野薫主任が成宮くんの肩を軽くたたく。
大人の余裕を見せつけるかのように、一言だけ言い残し私たちに背を向け歩き出す。
スーツが似合う男だと思った。
細野主任が入ってきた3日前、社内の皆が盛り上がっていた。
背が高く、スタイルもモデルのようで目立っていた。
周りの女性社員は、細野主任が皆の前で挨拶する際、顔しか注目していないことも私は気づいていた。
「すげえな」
隣に突っ立った状態の成宮くんは、口を尖らせる。
私は、細野主任みたいな完璧男性よりも成宮くんのようにかわいらしい一面のある男性に惹かれてしまうのだろう。
そんな姿に私は今、ときめいてしまっているのだから。
「すごいね」
「・・・ほんとに思ってんのかよ」
「・・・成宮くん、私年上ね」
「なに?」
「敬語にしなさい」
「先輩だから?」
「そう」
「ふうん、考えとくね」
今日初めて会ったとは思えないほどの距離の詰め方に私はタジタジである。