この恋、最後にします。




先ほどから視線を感じるのは気のせいだろうか。




成宮くんのお隣の可愛い妖精さんがこちらをチラチラと見ながら歩いている。




多分、あの子に私、気に入られていないことは確か。




最上汐里ちゃんねぇ・・・名前まで可愛いなんてね。




今の私には、到底敵わない。



自信ないし、顔も可愛くないし、並大抵のことしかできず、仕事も派遣だし。



この先の未来に、光が見えない25歳。



成宮くんが、最上汐里ちゃんと親しくなって、お互い両想いになる確率は高いと思う。




そうすれば、私への想いはすぐに消えていなくなるわけで。



自信がないがために、告白の返事ができないなんて、そんな言い訳通用しない。



好きなのに、自分のせいで付き合おうとする決心すらない。



こんな私のことなど、早く諦めた方が成宮くんのためなのに。



私は、拗らせてしまうし、あまのじゃくだし、ないものねだりなんだ。



成宮くんが私のことずっと好きでいてくれたらいいのになんて、考えてしまうのだ。



図太い女に育ってしまいました、母よ。




「ケントくん、君たちはどこに行こうとしてるのかね?」



「言い方おばさんだね」



「キレるよ?」



「ああ、ごめん、あそこだよ。ゲーセン」



「・・・・ゲーセンとな?」



「反応まじおばさんだね、まだ25歳でしょ?もっと若いふりできるよね?」




「君ねえ・・「お前あんまくらげさんのこといじめんな」




私がケントくんに言い返そうとした瞬間、ケントくんの肩を思いっきり掴むのは、鋭い目をした成宮くん。



って、その前に、くらげ・・・さん・・・?



「成宮くん、私のこと」



「くらげさんくらげさんって俺らにずーっと話してくるっすよ」

と、帽子を被るヤンチャ長髪くんが割って入ってくる。




神子谷さんって呼んだり、急にくらげって呼び捨てしたり、友達には、くらげさんだなんて。



「おいユウタ、ケントもだけど、お前らあんま話すな今日」



「おい顔赤いぜ」「ほんとだ、写真とってい?」二人は、顔が赤く、耳まで赤い成宮くんを茶化し始める。



「あ、そうだ神子谷さん、ちなみに俺らがくらげさんって言うと雪のやつ、ガチギレするんで怖いんすよ」



「そうなの?」



「くらげ、こいつらの言ってること全部嘘だから信じちゃダメ」



「そ~なの~?」



私もだんだんと成宮くんの反応の可愛さのあまり、いじってしまう。



「くらげ」



「可愛いね、やっぱり成宮くんは」



「それは照れるから今言うな、またいじられる」



そういった傍から、成宮くんのお友達は大げさに「ヒュー」「ガチ惚れ~」と言って茶化す。



先ほどまで怒っていた成宮くんが、もうどうでもよくなったのか皆と一緒に笑いだすのだ。



こんな光景を毎日近くで見れたら、すごく幸せだろうな。



私が、成宮くんともっと歳が近くて境遇も似ていたら・・・なんて考えてしまうのだ。



 
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