この恋、最後にします。
ゲームセンターについたのはいいものの、なんていったって私は学生の頃、友達とゲームセンターなんて遊ぶようなタイプでなかったし、とりあえず若者5人組に付いていくのに専念することにした。
「くらげ、これほしい?」
「どれ?」
成宮くんは「これ」といって指さす。
それはそれは、とても可愛い犬のぬいぐるみ。
「い、いやあ、私はいいよ」
「は、なんで」
「怖いよ、成宮くん。これはあの子の方が喜ぶと思うよ」
なんて情けないことをしているんだと、自分でも思う。
ましてや、さっきまで敵対されていた子の恋を発展させようとしている。
「なんで最上なの、俺今くらげに言ってんだけど」
「あ、ああ、ごめん。そうよね」
「もういいよ」
着いてすぐにこんな空気にしてしまう私はきっと才能だと思う。
恋に臆病ってかわいく聞こえはいいが、現実、自分を持っていないただの臆病者。
成宮くんは私から離れ、他の子たちに交じって楽しそうにやっている。
私は、みんなを見守る親になったかのように、椅子に座り黄昏るしかなかった。
ゲームセンターのメダルと有線と人の声の雑音でボーっとするが、皆の存在にはきちんとピントがあっていたのが不思議なんだ。
いつから私、こんな風に人と楽しく騒ぐことに離れてしまったのか。
そもそも、経験ない。
だから、さっきも成宮くんを怒らせてしまったのだ。
とか思いつつ、経験の有無のなさのせいなんかじゃないって自分が一番よく分かっている。
自分を認めたくなくて、環境や経験のせいにするのが癖になっていた。
だめだな、私。
この先、好きな人ができても、自分に自信がつく気がしないから彼氏なんかできやしないと思う。
成宮くんのことも、早くしっかり返事しないとだめだ。
成宮くんはまだまだ出会いはあるし、焦る必要もない。
私の返事を待ってまで、恋を続ける必要なんかない。
伝えよう、伝えなきゃ。
「くらげさん!こっち来てくださいよ!!」
「おい、くらげって呼ぶな」
「なんだよ独占欲強いな雪は」
「うるせえよ」
今日、ちゃんと終わらせよう。