この恋、最後にします。
「じゃあな、神子谷さん!」
「また機会あれば!」
「じゃ、さよなら」
「成宮も行くぞ!!!」
「雪!好きなのは分かるけど神子谷さんから離れなーーイタッなにすんだよ最上!」
成宮くんのお友達は大きく私に手を振った。
ごめんね、もう会わないと思うし、汐里ちゃんも最後までいてごめんね。
「じゃあねー」
私は小さく手を振った。
成宮くんは、今日返事を聞くのが嫌だったみたいだけど、結局残ってくれている。
そういうところ・・・・
「ごめん、すぐ終わらせるから」
「・・・俺やだな聞くの」
「聞いて」
「あの時は余裕ぶっこいてたけど、これもうなんか、やだわ」
「成宮くん」
「俺、今、ここで、こんな」
成宮くんは私の前で頭を抱えるようにしゃがんだ。
私の言葉を無視するように。
綺麗にセットした髪の毛を乱してまで。
成宮くんは、私を好きだった。
分かっていて、私はやっぱり最低なことをしていた。
付き合う勇気もないのに、思わせぶりなことをして。
あの時の私のまま、何も変わっていないーーーーーーー
「成宮くん、ごめんなさい私付き合えない」
「なんで・・・」
「ごめんなさい」
「聞きたくない言葉って、こんなはっきり聞こえちゃうんかよ」
「ごめん成宮くん」
「・・・・謝んなよ悪くもないのに」
「成宮くん私ずっと」
「結構、辛いなこれ」
「成宮くんねえ・・・なりm」「もういいって」
「ごめん・・・」
しゃがみこんだまま成宮くんは顔を上げ、私と数秒間見つめあった。
綺麗な瞳のせいで、最初は気づかなかったけど、多分もう彼は私を好きじゃなくなったんだと思った。
目が、綺麗で、とても怖くて。
まるで誰かに憑依されたみたいに、成宮くんが私を見る瞳が明らかに変わった。
心臓がドキドキしていたのも、恋していた時のドキドキ感ではない。
見つめられるのが怖かった。そんな風に思ってしまった。
私は、彼の目を逸らしたくても逸らすことができなかった。
何秒か経った後、成宮くんはスッと立ち上がり、私に「ちゃんと諦めるから」と言い、前を横切った。
成宮くんの横顔はとても儚く、今にも消えそうだった。