この恋、最後にします。
「神子谷、ご飯行かないか?」
いつものように、細野主任は書類を渡すついでのように食事に誘ってくる。
「細野主任、いい加減セクハラで訴えますよ?」
「神子谷さん、もうそろ懲りたらどうです?細野主任、泣いちゃいますよ」
「柏木、お前最近俺のこといじってるよな」
「いじってませんよ」と言って、柏木さんは席を外す。
「なあ神子谷、もしかして最近元気ないのってこいつが原因なのか?」
「え」
細野主任の視線は明らかに私のデスクの横。
柏木さんではなく、成宮くんの座っていた席だ。
「何言ってるんですか、私別に気にもかけてません」
「俺は騙されないぞ神子谷、お前全く自分の話しないからって俺が気づかないと思ったら大間違いだ」
「何が言いたいんでしょう・・・か」
もしかしてバレた?
恋をしている私は顔に出すことがないように気を遣っていたつもりだけど、もしかしてバレてる?
でも、成宮くんが来なくなって今日で2ヶ月目になるのに、今それを言う?
咳ばらいをした後、細野主任は目を細めて、成宮くんのデスクに指をさして口を開く。
「お前は、成宮と・・・・・」
「・・・はい?」
私は目が明らかに泳いでいた。
もし、好き同士だったとか言われても、大きな声とか出して誤魔化せばいい。
「喧嘩した!!!!!!」
「ワア!!!!・・・・・・え?喧嘩?」
反射的に大声を出してしまったが、頭の上にはてなマークが増えていく。
「違うのか?」
デスクに戻った柏木さんに「細野主任、違いますよ」と言われ、笑われる細野主任の顔はとても火照っていた。