この恋、最後にします。
「なんだ違うのか」
「何言うのかと思ったら、そんな子供じみたことしませんよ」
「じゃあなんだ、お前が悲しい顔する原因は」
「悲しくなんかないです」
「俺じゃダメなのか」
「え?」
「ああ、いや、違くて。ああいやそういうんじゃなくて、だからその」
「神子谷さん」
見かねた柏木さんが、私を呼ぶ。
「はい」
「よかったら今日、飲みに行きません?」
「え?」
「は!?今俺が断られたばっかりなんだぞ?」
細野主任は動揺し、ネクタイを緩め、目をぱちくりさせる。
「ああ、いや細野主任には悪いですけど、やっぱりちょっと神子谷さんのこと心配です。
何か悩みがあるのなら、私が助けになりたいわ」
「それは俺だって」
「柏木さん・・・ありがとうございます」
「神子谷さんどうですか?」
「・・・是非」
「俺も行っていいのか?」
「いえ、細野主任はNGで。今日は女子会ですから。ね、神子谷さん」
「フフッええ、すみませんね、主任」
あまり納得していない様子の細野主任は、ブツブツと小言を言いながら私たちから離れる。
「熊井さんも誘って。どうです?」
「熊井さんって・・・あの店長の」
「熊井さん、あの日神子谷さんと会って、もっと話してみたかったのよって後日私に」
「そう、なんだ」
「熊井さん、私たちよりも大先輩だから、沢山話も聞けるかもしれないわ」
「え?」
「社員になれる、いい情報もってるかもしれないわ」
フウ・・・と息を軽く吐き、私は前向きな表情をしてみせた。
隣の柏木さんが私の表情を確認し、「決まり決まり」とウキウキの様子で熊井さんに連絡をとりはじめた。