【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

寵姫になるために 8話

 宮殿内は、アナベルの予想を大きく超えていた。

 ダヴィドの住んでいる屋敷もすごかったが、ここはそれよりもすごかった。あまりのまぶしさに彼女は目を細める。

(――すごいとしか、言いようがないのよね……)

 あまりにもきらびやかすぎて、自分がここにいるのが場違いなのでは? と考えてしまう。

「アナベルさま、私についてきてください」
「え? あ、はい……」

 メイドの一人に声をかけられ、アナベルは彼女についていく。

 その場に残ったのは、エルヴィスとロマーヌだけだ。

「……さて、ロマーヌ。彼女をどう思う?」
「……どう、とは?」
「イレインと戦えそうか?」

 目を(またた)かせたロレーヌは、エルヴィスをじっと凝視した。その視線をさけるように腕を組む彼に、ロマーヌは「そうですね……」とアナベルの背中に視線を移して、にっこりと微笑む。

「性格についてはまだ知りませんので、お答えできません。ですが、あの背筋をピンと伸ばして歩く姿、陛下と並んでも引けを取らない美貌(びぼう)……。話し方は問題ですが、これから学べばよいのです。……ところで、本当に未婚のまま彼女を?」
「ああ。紹介の儀までには間に合わせる」

 ニヤリと口角を上げるエルヴィスに、ロマーヌは扇子を取り出して広げ、口元を隠した。

「――完璧な淑女(レディ)にしてみせますわ」

 すっと目元を細め、ロマーヌを頼もしそうに見るエルヴィス。
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