【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 ここで待つのもなんだから、と食堂に案内されたエルヴィスは、おそらくメイドたちに身体を磨かれ、生まれて初めて着るドレスに苦戦しているであろうアナベルを想像して、口元に弧を描いた。

 それを目撃したロマーヌは、意外そうに目を丸くする。

(……陛下は本気、のようですわね。でしたら、私も気合を入れて彼女に接しましょう)

 紹介の儀に向けて。

 ロマーヌが決意を固めているあいだに、アナベルはステージ後ということで問答無用で浴室に案内され、数人がかりできれいに洗われ、魔法を使って身体と髪を乾かし、保湿のためのボディクリームをたっぷりと塗り込まれて、

「ゃ、ぁ、はははっ! くすぐったいっ!」
「我慢してくださいませ。このボディクリーム、とってもお肌がすべすべになるんですよ」

 ――と、くすぐったさに(もだ)えていた。

 ボディクリームを塗り終えると、メイドたちは彼女にふわふわのバスローブを着せて、ドレスルームに案内する。

 浴室からドレスルームは、驚くほど近かった。

「衣装係、あとは頼みます! 私たちは寝室のセッティングへ向かいます!」
「わかりました、お任せください!」

 テンポよく話すメイドたちを見て呆気に取られながらも、ドレスルームにいるメイドたちがアナベルを取り囲む。

 ひくり、とアナベルの表情が引きつった。
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