【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
 メイドたちは手早くバスローブを脱がせると、彼女の身体を見て「これだけのプロポーションならば、シュミーズドレスにショールが良いかしら?」やら、「他のドレスも似合いそう」やら、「コルセットを使ったドレスもあとで着てもらいましょう」と話し合っているのを聞いて、困惑したようにメイドたちを見渡す。

 剣舞を舞っているときとは違う視線。自分の身体をこうも客観的に見られるのは、慣れないので居心地が悪い。そもそもドレスの種類などアナベルは知らないので、混乱していた。

 混乱しているあいだに着替えが済んでいて、メイドが彼女に声をかける。

「シュミーズドレスです。着心地はいかがでしょうか?」
「とても軽いのね……。肌触りも良いし、気に入ったわ」

 シュミーズドレスはとても肌触りが良く、そっと肩にかけられたショールの肌触りも、思わず目を見開いてしまうくらい良かった。

「では、今度はこちらに」

 ドレスルームは、化粧するための道具も揃っていた。

 ドレッサーの前に座るようにうながされ、すとんと座る。「失礼いたします」とメイドが口を開き、慣れた手つきでアナベルに化粧をしていく。

 普段、舞台用の濃い化粧しかしていなかったアナベルは、新鮮な気持ちで鏡に映る自分を見つめていた。

「髪もセットしましょうね」

 (くし)を取り出し、髪を毛先からゆっくりと()いていく。

「こちらをお使いしてもよろしいですか?」
「それは?」
「香油でございます。バラの香油は、華やかなアナベルさまに良く似合うかと……」
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