【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
寵姫になるために 9話
二人はそんなアナベルを見て、慈しむように目元を細める。
なぜそんな視線を向けられるのかわからなくて、アナベルはこてんと首をかしげた。
うっすらと、ロレーヌの目には涙の膜が見える。
「……もしかして、ミシェルさんとお知り合い?」
「そうだな。……なにか話せばいいものか……」
ちらりとロレーヌに視線を送るエルヴィス。彼女はハンカチで目元を抑えて、それから真っ直ぐにアナベルを見つめた。
「もともと、ミシェルは貴族の令嬢でした」
ロレーヌの言葉に、アナベルは「ああ、やっぱり」とどこか納得した。生粋の踊り子というわけではなさそうだったから。
周りの人たちも、ミシェルとクレマンの二人に対して、丁寧な接し方だったように思える。
「もしかして、クレマン座長も?」
「ああ。彼は伯爵家の末っ子だった。騎士団に所属して、ひょんなことからミシェルに出会い、恋に落ちた――……」
まるで、物語のようだとアナベルは彼の話に聞き入る。
ミシェルは当時、王都一の美少女と言われていた。
両親から愛され、すくすくと育ったミシェルは、王城で華々しくデビュタントを迎えた。美しい彼女に求愛する人は多く、ずっと悩んでいたらしい。
パーティーに参加すれば男性陣に口説かれ、家に帰れば求婚の手紙の束が待っていて、ほとほと困っていた。
そして、何回目かのパーティーに出席したとき、ミシェルがのらりくらりと自分の求愛を躱していることに苛立った男性に、無理矢理個室に連れ込まれそうになった。
それを助けたのが、クレマン。
クレマンとミシェルは顔見知り程度の付き合いだったが、その日からぐっと距離が縮まったそうだ。
なぜそんな視線を向けられるのかわからなくて、アナベルはこてんと首をかしげた。
うっすらと、ロレーヌの目には涙の膜が見える。
「……もしかして、ミシェルさんとお知り合い?」
「そうだな。……なにか話せばいいものか……」
ちらりとロレーヌに視線を送るエルヴィス。彼女はハンカチで目元を抑えて、それから真っ直ぐにアナベルを見つめた。
「もともと、ミシェルは貴族の令嬢でした」
ロレーヌの言葉に、アナベルは「ああ、やっぱり」とどこか納得した。生粋の踊り子というわけではなさそうだったから。
周りの人たちも、ミシェルとクレマンの二人に対して、丁寧な接し方だったように思える。
「もしかして、クレマン座長も?」
「ああ。彼は伯爵家の末っ子だった。騎士団に所属して、ひょんなことからミシェルに出会い、恋に落ちた――……」
まるで、物語のようだとアナベルは彼の話に聞き入る。
ミシェルは当時、王都一の美少女と言われていた。
両親から愛され、すくすくと育ったミシェルは、王城で華々しくデビュタントを迎えた。美しい彼女に求愛する人は多く、ずっと悩んでいたらしい。
パーティーに参加すれば男性陣に口説かれ、家に帰れば求婚の手紙の束が待っていて、ほとほと困っていた。
そして、何回目かのパーティーに出席したとき、ミシェルがのらりくらりと自分の求愛を躱していることに苛立った男性に、無理矢理個室に連れ込まれそうになった。
それを助けたのが、クレマン。
クレマンとミシェルは顔見知り程度の付き合いだったが、その日からぐっと距離が縮まったそうだ。