【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
踊り子 アナベル 3話
一日、一日があっという間に過ぎていき、ついに二週間が経過した。
アナベルを迎えにきたのは、あの日、母からアナベルを引き離した騎士だった。怯えるように身体を震わせるアナベルを見て、ふいと視線をそらす。
「これが金貨二十枚だ。では、少女は連れていく」
テーブルの上に金貨の入った袋を置いて、アナベルの手を強く握って家から出る。
アナベルは必死に家族へ手を伸ばして抵抗しようとしたが、家族の誰もがアナベルに手を伸ばしてはくれなかった。
ただただ、肩を震わせて泣いていて、家族を断ち切るようにぱたんと玄関の扉が閉まる。
「ここからジョエルさまのところへは、移動に時間がかかる」
騎士はそう説明しながら、アナベルを無理矢理馬車へ押し込む。それから自分も乗り込み、御者へ合図を送ると馬車が動き出した。
どんどんと遠ざかっていく村を見て、アナベルは泣いた。声を大きくして泣いた。
「……悲しいか?」
泣きじゃくるアナベルに対して、騎士がそう問いかける。
アナベルは顔を隠して、こくんとうなずいた。
「……この世のすべては権力者のものだ。お前がジョエルさまの花嫁になるのは、ジョエルさまに気に入られたからだ。権力者に気に入られるっていうのは、面倒なことでもある。だがな……生きたきゃ媚びるしかないんだよ。……だからお前も媚びろ、媚び続けろ。そうすることで、道が開かれるかもしれない」
騎士はやるせなさそうに目を伏せた。アナベルを連れていく役目を担った彼にも、いろいろと葛藤があったのだろう。
アナベルは泣きながら、騎士を見た。騎士の瞳に映る自分を見て、ぎゅっと両手を握る。
アナベルを迎えにきたのは、あの日、母からアナベルを引き離した騎士だった。怯えるように身体を震わせるアナベルを見て、ふいと視線をそらす。
「これが金貨二十枚だ。では、少女は連れていく」
テーブルの上に金貨の入った袋を置いて、アナベルの手を強く握って家から出る。
アナベルは必死に家族へ手を伸ばして抵抗しようとしたが、家族の誰もがアナベルに手を伸ばしてはくれなかった。
ただただ、肩を震わせて泣いていて、家族を断ち切るようにぱたんと玄関の扉が閉まる。
「ここからジョエルさまのところへは、移動に時間がかかる」
騎士はそう説明しながら、アナベルを無理矢理馬車へ押し込む。それから自分も乗り込み、御者へ合図を送ると馬車が動き出した。
どんどんと遠ざかっていく村を見て、アナベルは泣いた。声を大きくして泣いた。
「……悲しいか?」
泣きじゃくるアナベルに対して、騎士がそう問いかける。
アナベルは顔を隠して、こくんとうなずいた。
「……この世のすべては権力者のものだ。お前がジョエルさまの花嫁になるのは、ジョエルさまに気に入られたからだ。権力者に気に入られるっていうのは、面倒なことでもある。だがな……生きたきゃ媚びるしかないんだよ。……だからお前も媚びろ、媚び続けろ。そうすることで、道が開かれるかもしれない」
騎士はやるせなさそうに目を伏せた。アナベルを連れていく役目を担った彼にも、いろいろと葛藤があったのだろう。
アナベルは泣きながら、騎士を見た。騎士の瞳に映る自分を見て、ぎゅっと両手を握る。