【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「そういうことでしたか……」

 ぽつり、とロレーヌが言葉をこぼす。

「ここに集まっているのは、王妃イレインに復讐したい人たちですのね」
「……そうね、あたしの人生、彼女にぐちゃぐちゃにされたし。できれば同じような絶望感を、味合わせてあげたいわぁ」

 ――焼け落ちた実家。一人残さず消えた村人。

 ――自分を無理矢理連れていった貴族。

 ――忘れるはずのない、忌々しい記憶。

「ロレーヌさんは、ミシェルさんのために……?」
「……私の子は、王妃の侍女になりました。……その一年後、謎の死を遂げています」
「えっ」
「彼女は自分よりも若い女性が大嫌いのようです。王妃の侍女に抜擢されたとき、娘はとても喜んでいました。それなのに……」

 見るも無残(むざん)な姿で発見されたとき、イレインは『まだ若いのに可哀想に』と白々(しらじら)しく言葉にしたらしい。

 ――そして、笑った。

(わたくし)のお気に入りに声をかけられて、舞い上がるからよ』

 ――と。

 ロレーヌはその言葉を耳にして、イレインを見上げた。彼女は冷たい目でロレーヌのを見つめていたらしい。

 ロレーヌはゾッとした。彼女は危険だ、と本能で察した。

 自分の侍女がこんなにも無残な姿で発見されたというのに、イレインはまったく動じていなかったのだ――……
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