【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
その翌日、一番の古株であるメイドが、イレインのもとを訪れて彼女に声をかける。
「王妃陛下、あの噂を耳に入れられましたか?」
「エルヴィス陛下が寵姫を迎えること?」
「はい。名はアナベル。剣舞の踊り子だったようです。デュナン公爵がパーティーの余興を頼んでいたようで、剣舞を見たエルヴィス陛下が寵姫になるように誘った、と……」
「……。面白くありませんわね」
イレインは睨むように窓の外を見る。
彼女の心とは正反対に、エルヴィスの瞳のような青空が広がっていた。
「旅芸人の一座にいたようで、そこまでしか調べられませんでした。ああ、ですが……その旅芸人は、クレマンが率いていたようです」
「クレマン? ああ、あの……。へえ、どんな顔をして戻ってきたのかしらね?」
「ミシェルの姿はありませんでした」
「ミシェル?」
初めて聞く名だとばかりに首をかしげるイレインに、メイドはミシェルのことを説明する。
そこでやっとミシェルのことを思い出したのか、「ああ」と声を出した。
「いましたわね、そんな人。すっかり忘れていましたわ」
クレマンの子を宿し、幸せの絶頂にいた女性。
その幸せそうに輝く笑顔が気に入らなかった。
だから、手を出したのだ。
不幸になれ、と呪いながら。
そんな存在を思い出して、イレインは肩をすくめた。
「彼女のことはもうどうでもいいの。それより、問題はその『アナベル』という女性ですわね。――紹介の儀までに、調べられるだけ調べてちょうだい」
「かしこまりました」
メイドは一礼して、イレインの部屋から去っていく。
イレインは鏡の前まで移動すると、そっと鏡に触れた。
「――私よりも美しい女性はいらない――」
だって私は、誰よりも美しいのだから。
――冷たい声でつぶやくイレイン。
その言葉を聞いたものはいなかった――……
「王妃陛下、あの噂を耳に入れられましたか?」
「エルヴィス陛下が寵姫を迎えること?」
「はい。名はアナベル。剣舞の踊り子だったようです。デュナン公爵がパーティーの余興を頼んでいたようで、剣舞を見たエルヴィス陛下が寵姫になるように誘った、と……」
「……。面白くありませんわね」
イレインは睨むように窓の外を見る。
彼女の心とは正反対に、エルヴィスの瞳のような青空が広がっていた。
「旅芸人の一座にいたようで、そこまでしか調べられませんでした。ああ、ですが……その旅芸人は、クレマンが率いていたようです」
「クレマン? ああ、あの……。へえ、どんな顔をして戻ってきたのかしらね?」
「ミシェルの姿はありませんでした」
「ミシェル?」
初めて聞く名だとばかりに首をかしげるイレインに、メイドはミシェルのことを説明する。
そこでやっとミシェルのことを思い出したのか、「ああ」と声を出した。
「いましたわね、そんな人。すっかり忘れていましたわ」
クレマンの子を宿し、幸せの絶頂にいた女性。
その幸せそうに輝く笑顔が気に入らなかった。
だから、手を出したのだ。
不幸になれ、と呪いながら。
そんな存在を思い出して、イレインは肩をすくめた。
「彼女のことはもうどうでもいいの。それより、問題はその『アナベル』という女性ですわね。――紹介の儀までに、調べられるだけ調べてちょうだい」
「かしこまりました」
メイドは一礼して、イレインの部屋から去っていく。
イレインは鏡の前まで移動すると、そっと鏡に触れた。
「――私よりも美しい女性はいらない――」
だって私は、誰よりも美しいのだから。
――冷たい声でつぶやくイレイン。
その言葉を聞いたものはいなかった――……