【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「ごきげんよう、デュナン公爵。そちらの方が、今回の寵姫ですか?」
扇子を閉じてすっと立ち上がると、ダヴィドに対してにこりと――目が笑ってない笑みを浮かべながら尋ねる。
ダヴィドはうなずいて、そっとアナベルの背中を押した。
アナベルはちらりと彼を見てから、一歩前に出てドレスの裾を柔らかく掴みカーテシーをする。
その自然な……いや、むしろ洗練された動きは、周りにいた貴族を一瞬で魅了した。
「踊り子だったのだろう?」
「あんなに綺麗なカーテシーができるなんて、本当は貴族の令嬢だったのでは?」
感心したような貴族の声が耳に届き、イレインはこほん、とわざと咳払いをする。
「アナベル・ロラ・アンリオと申します」
ぴくり、とイレインの眉が跳ねた。
「どうですか、美しいでしょう?」
ダヴィドがアナベルを見て、イレインに視線を移してにっこりと笑う。
イレインは困ったように眉を下げて、扇子を再び広げて口元を隠した。
「ええ、本当に美しい女性で驚きましたわ。……陛下も隅に置けませんわね。……それにしても、ただの踊り子と聞いていたのですが?」
「ああ、それは陛下の計らいでして。彼女の故郷はなんと、十五年前に焼かれたらしく……五歳の女の子が森の中で行き倒れになっていたところを、旅芸人の一座が助けた……とのことです」
扇子を閉じてすっと立ち上がると、ダヴィドに対してにこりと――目が笑ってない笑みを浮かべながら尋ねる。
ダヴィドはうなずいて、そっとアナベルの背中を押した。
アナベルはちらりと彼を見てから、一歩前に出てドレスの裾を柔らかく掴みカーテシーをする。
その自然な……いや、むしろ洗練された動きは、周りにいた貴族を一瞬で魅了した。
「踊り子だったのだろう?」
「あんなに綺麗なカーテシーができるなんて、本当は貴族の令嬢だったのでは?」
感心したような貴族の声が耳に届き、イレインはこほん、とわざと咳払いをする。
「アナベル・ロラ・アンリオと申します」
ぴくり、とイレインの眉が跳ねた。
「どうですか、美しいでしょう?」
ダヴィドがアナベルを見て、イレインに視線を移してにっこりと笑う。
イレインは困ったように眉を下げて、扇子を再び広げて口元を隠した。
「ええ、本当に美しい女性で驚きましたわ。……陛下も隅に置けませんわね。……それにしても、ただの踊り子と聞いていたのですが?」
「ああ、それは陛下の計らいでして。彼女の故郷はなんと、十五年前に焼かれたらしく……五歳の女の子が森の中で行き倒れになっていたところを、旅芸人の一座が助けた……とのことです」