【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

紹介の儀 3話

 イレインが会場から去り、残されたアナベルたち。

 ちらりと(うかが)うように彼女たちに視線を向けていた貴族たちを見て、アナベルはエルヴィスから離れて彼を見上げる。

 エルヴィスの口が動くのを見て、アナベルは貴族たちを見渡した。

「さぁさ、みなさま。せっかくこうして出会えたのですもの。わたくしとお話をしてくださいませんか」

 アナベルが片腕を広げて凛とした声を出すと、誘われるように貴族たちが近付いてきた。

 貴族たちの探るような視線を受けても、アナベルは動じない。

 むしろ、自分に興味を持ってくれて良かったと、安堵していた。

(――それにしても、王妃サマは確かに美しかったけれど、あの美しさはどうしてこんなにも怖い(・・)の――……?)

 イレインの『作られた美』が恐ろしく感じる。

 踊り子の仲間が化粧をして、どれだけ美しくなろうが、恐怖を感じたことなど一度たりともないのに――……

 アナベルが思考を巡らせていると、周りにいた貴族たちは、カクテルを片手に話しかけてきた。

「エルヴィス陛下とは、デュナン公爵のお屋敷で出会ったのですか?」

 一人の女性が、目をキラキラと輝かせて(たず)ねてきた。

 アナベルは小さくうなずき、カクテルを一口飲む。

 それから、口付けたグラスの(ふち)をなぞるように人差し指の腹で触れると、顔を赤らめた。
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