【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「では、アナベルと呼ばせていただきますわね。……少し、疑問に思っていたのですが、ケープを羽織っているとはいえ、シュミーズドレスは寒くありませんか?」
「あ、それ私も気になっていました。この国は寒いでしょう? 身体が冷えるのでは……?」

 他の女性たちも興味深そうにシュミーズドレスを眺めていた。

 アナベルは視線を落として自身のシュミーズドレスを見て、小さく首を左右に振る。

「このドレス、触れてみていただけませんか?」
「よろしいの?」
「もちろんですわ」

 コラリーにそう声をかけると、彼女は目を瞬かせて首をかしげた。

 アナベルの首が縦に動くのを見てから、そっと彼女のドレスに触れる。

「あたたかい……?」

 シュミーズドレスに触れて、手に伝わるじんわりとした温かさに目を丸くするコラリー。アナベルは得意げに「でしょう?」と笑った。

「このシルク、魔力を秘めておりますの。このままだと寒いだろうから、とエルヴィス陛下が(みずか)ら付与魔法をかけてくださいましたの!」
「まぁっ、陛下自ら? あら? ですが陛下が得意なのは氷の魔法なのでは……?」

 アナベルに近付いてきたエルヴィスに、貴族たちの視線が集中する。

 他の貴族たちも、アナベルのドレスを見ようと彼女たちに近付いてきた。

「……なにか誤解があるようだが、一応他の魔法の適性もあるぞ、私は」

 魔力を少しでも持っていれば、魔法は使える。

 使い方は人それぞれだが、大体が生活に役立つ魔法を使う。

 そして、その魔法の使い方は、親が子どもに教えるものだ。
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